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外壁の種類と特徴

1. 外壁の役割

住宅における外壁には3つの大きな役割があります。
一つは火事における建物への延焼を一定時間防いだり、風雨や日射から建物を守るという主に外的要因から家を守る耐火・耐候的役割、次は防音・断熱等によって快適な居住空間を形成するという居住的役割、最後は外観のデザインによって家の個性を出したり、あるいは景観と調和させる意匠的な役割です。
つまり、安全性や快適性それに意匠性というどれをとっても欠くことのできない役割が外壁にはあるのです。この3つの要素を柱にしながら外壁選びを進めていくことが重要です。

では実際にどのように外壁選びを進めていけばいいのか?
ちょうど今、素敵な家を作ろうといろいろ悩んでいる夫婦がいますのでちょっと覗いてみましょう。

モル太とルー子の外壁選び ~湿式・乾式って?~

- 登場人物 -

ウォール博士 … その名の通り、壁のことなら博士に聞くべし。

モル太 … 夢のマイホーム作りでは失敗と妥協は許されないと意気込む旦那さん。家は奥さんの為のものと悟りを開いている。

ルー子 … いつもは冷静でしっかり者。素敵な家を想像するとたまに妄想してしまうことも…

ウォール博士
「お二人さん、どうだい?家づくりの構想は進んでいるかい?」
モル太
「あっ博士。実は外壁で悩んでまして・・・」
ルー子
「そうなんです。私たちなりにいろいろ考えているんですけれど・・・・」
ウォール博士
「ほう、どんな感じかね?」
ルー子
「私のイメージは、まず、オレンジとか茶色とかの暖色系の焼き瓦をランダムに並べてた屋根でしょ。壁は淡いオレンジか白色で、窓には花台を付けて、飾り戸なんかがあったら素敵よね。玄関の壁はアーチにして・・・」
ウォール博士
「なるほど、プロバンス風の家じゃな」
ルー子
「はい!ガーデニングをしたり、お庭でお茶をしたり・・・・  あぁいいわぁ・・・・」
ウォール博士
「・・・・・」
「そうか、そうか。だいぶイメージが出来上がっておるな。モル太君はどうなんじゃね?」
モル太
「はい、外観は僕も同じ思いです。ただ、何を選んで良いのか、費用とか機能性のことなんかもよく分からなくて・・・」
ウォール博士
「なるほどね。では外壁の工法には 湿式と、乾式があることは知っているのかい?」
モル太
「・・・・・・」
ルー子
「あ、それ知ってます。湿式って塗り壁のことで、乾式ってサイディングの壁のことですよね。」
ウォール博士
「ほう、よく勉強してるね。そうじゃな、読んで字のごとく湿式というのは水を混ぜた材料を塗りつける工法じゃよ。昔からある伝統的な工法でいわゆる左官工事じゃな。余談じゃが左官という言葉の由来は平安時代に宮中の壁塗りで出入りを許可されていた者がそう呼ばれていたんじゃ。つまり ″官″が付くほどの高位で、重要な役割だったんじゃよ」
モル太
「へぇ、知らなかった」
ウォール博士
「一方の乾式とはいわゆる水を使わない工法のことで、一般的にはサイディングを使う工法じゃよ。サイディングとは工場で生産されたボードやパネルを現場で張り付けてゆくんじゃ。素材もデザインも豊富で現在の住宅ではこれが主流になっておる」
モル太
「なるほどですね。でも僕たちが建てる家ではどちらが良いんですかね?」
ウォール博士
「わからん!」
モル太・ルー子
「・・・・・」
ウォール博士
「というのは冗談で、どちらにも優れた点がある。要はそこに住む者がなにを求めるかじゃ」

乾式とは

ウォール博士
「ではまず、乾式工法のサイディングじゃが、先に述べたように工場で生産されたものが現地で組み立てられていくのじゃが、これはなにを意味するか分かるかな?」
モル太
「うーん・・・」
ルー子
「品質に偏りがないって事かしら・・・」
ウォール博士
「さすがルー子ちゃん。正解じゃ。メーカーの規格検査をパスしたものが出荷されるので、金太郎飴の様に同じ品質ものが出来上がるわけじゃよ。さらに現場では切りそろえて組み立てるだけなので、乾燥硬化が必要な湿式と違って工期を短縮することもできる分けじゃ。」
ルー子
「工期が縮まれば、コストも下げられるわね」
ウォール博士
「そういうことじゃ。あとは工法にも特徴があるんじゃよ。サイディングは合板に透湿防水シートと呼ばれる紙をまず貼ってから、その上に胴縁と呼ばれる細長い角材を一定間隔で打ち付けていくんじゃ。そして最後にその胴縁に金物でサイディングを引っかけたり、釘で打ち付けたりするんじゃな。合板とサイディングの間には胴縁によって空洞ができるから、これを通気工法と呼んでおる。」
モル太
「あ、通気工法って聞いたことあります。」
ルー子
「結露対策に良い工法ですよね」
ウォール博士
「結露で断熱材による断熱効果が低下するだけではなくて、構造体自体も腐ってしまう恐れがある。つまり建物は湿気に弱いんじゃ。透湿防水シートというのは湿気は通すが水は通さないという優れものなのじゃよ。今ではサイディングを採用した場合は必ずと言っていいほどこの工法じゃな」
モル太
「品質・コスト・機能性と三拍子そろった優れものですね」
ウォール博士
「そうじゃな、それがここまで普及している理由であることは否定できないな」

湿式とは

モル太
「それじゃあ湿式はどうなんですか?」
ウォール博士
「湿式の特徴はズバリ、あらゆる面で自由がきくことじゃ」
モル太
「自由? ですか」
ウォール博士
「そうじゃ、例えばアーチや曲線の壁を作ったりすることも出来るし、飾りの段々を作ることも出来る。つまり造形の自由度が高いんじゃ。それに色も自分の好みに合った色を作ることができる。これらは既製品では難しい部分じゃな。さらに最終の仕上塗材も数ある商品の中から選ぶことができるぞ」
ルー子
「どんなものがあるんですか?」
ウォール博士
「そうじゃな、例えば珪藻土であったり漆喰といったものじゃ。これらは調湿、防水、断熱などの効果があるので建物にもやさしいんじゃよ。ちと値が張るのが難点じゃが・・・。あとは意匠性に優れた塗材というのも数多くでておる。左官のコテを使ってパターンを付けていくものや、ローラーを使って模様を付けるもの、吹付け仕上げのもの、同じ材料でもそれぞれ違った風合いを出すことができて、まぁいわばそれがその家の個性となってくるんじゃ」
ルー子
「まぁ素敵」
ウォール博士
「湿式の良いところはこの風合いじゃな。サイディングのように部材をつなぎ合わせることはないので、一枚壁が塗り壁ならではの重厚感を出すことができるんじゃよ。
またすべて職人による手仕事なので本物ならではの風合いもなかなかじゃ」
モル太
「でも、機能性はどうなんでしょう?サイディングでは通気工法の話がありましたが」
ウォール博士
「実は湿式でも通気工法ができるんじゃよ。セメントで生成されたボードを貼ってからモルタルを塗るものや、モルタルを付着させる金網だけ先にサイディングのように貼ってから塗りこむ方法などがあっての、どちらも最終仕上は湿式の時と同じように行われるので湿式通気工法などと言われておる。
つまり、湿式は通気工法も非通気工法もどちらもできるというわけじゃよ。
ただし通気工法じゃないから劣っているということはないんじゃよ。壁の内側できちんと気密処理が施されていれば結露も発生しにくくなるんじゃからの」
ルー子
「あとは壁のひび割れが心配だわ?大丈夫かしら?」
ウォール博士
「クラックのことじゃな。絶対に起きないとは言えんが、最大限できないようにすることは可能じゃ。モルタルを壁に塗るときにガラス繊維などでできたネットを一緒に伏せこむことによってクラックの防止策になるし、同時に仕上材を弾性の強いものにすることも効果があるんじゃ。工務店とよく相談して予算なども含めて最善の方法をとることが重要じゃよ」

モルタル壁とは

モル太
「サイディングは品質が均一ですが、モルタル壁はどうなんでしょう?」
ルー子
「職人さんで、出来不出来は左右されるのかしら?」
ウォール博士
「サイディングであっても製品の質が均一なだけで、職人による差はある。しかしそれ以上にモルタルの壁ではあり得ることじゃ。熟練した職人の腕によるところが大きい湿式の壁は、まずは信頼できる施工店を選ぶことが何より重要じゃ」
モル太
「博士のおかげでだいぶ分かってきました。どちらも品質や機能性に優れていて、経済性のよいサイディングと意匠性が良く、独特の風合いが特徴のモルタルといった感じでしょうか?」
ウォール博士
「そういうことじゃ。まサイディングに関してはピンキリじゃがな」
モル太
「はかせとても参考になりました。ありがとうございます」
ルー子
「ありがとうございます」
ウォール博士
「いやいや、困ったらまたいつでも来なさい」

2. 外壁の工法

湿式工法

モルタルや土壁、漆喰などに水を混合し塗りつける昔ながらの工法。左官工事などがその例である。
曲線などデザインに自由が利き、つなぎ目のない一枚壁で綺麗な仕上がりが特徴。
乾式工法と比べると乾燥硬化が必要な分、天候に工期が左右されるのが難点。

乾式工法

左官工事のように水を含んだ材料は使わずに、工場で生産されたボードやパネルなどを現場で組み立てていく工法。乾燥硬化が必要ないため作業効率は良く、工期の短縮化が計れる。

*構造によっては下地が乾式工法で、仕上げが湿式工法というものも普及してきています。 おもに通気工法で用いられ、結露対策等の機能面、パネル工法特有の均一品質の保持や工期短縮の利点、湿式工法のデザイン性などを併せ持つ工法です。

3. 外壁の種類と特徴

モルタル

セメントにパーライトなどの軽量骨材を混ぜ水で練りあわせた外壁材。熟練した職人の手により施工され、繋ぎ目のない一枚壁で、手作りの風合いと重厚感が特徴。クラックが生じやすい点があげられるが、グラスファイバーネットを塗りこむことによって軽減される。モルタル自体は非透水性であるが、外装仕上材や漆喰、珪藻土などの塗り壁やタイルなどでバリエーション豊かに仕上げることができる。

仕上げのバリエーション

❶ 意匠性塗材

塗材に骨材を混合しコテやローラー、吹付けなどで仕上げる。意匠パターンや色が豊富に用意されており個性的な仕上がりが特徴。弾性(可とう性=ひび割れない、はがれない)や防藻・防カビ性、耐候性が高く、意匠性だけではなく機能性にも優れている。

― 仕上パターン ―

●コテ仕上げ
鏝を使用するパターン。塗り壁ならではの空間表現が可能。熟練された職人の手仕事による味わい深い仕上がりが人気。

●ローラー仕上げ
専用ローラーによって深い陰影と質感を表現。リズミカルに続く独特の連続紋様は塗り壁に表情を与えます。

●吹付け仕上げ
スプレーガンを使って吹き上げる方法。低コストで普遍性も高い。平滑な仕上がりの中にも吹付けならではの陰影が魅力。

❷ 天然塗材

●漆喰
消石灰にふのりと藁すさ、顔料などを混ぜて、水で練りあわせたもの。壁の内外部に使用され、調湿効果、防水効果があり不燃素材でもあるので古くから日本の家屋に伝統的に使用されてきた材料。

●珪藻土
植物プランクトンの死骸や粘土が海底や湖底に堆積した化石化した土。これに凝固剤や植物繊維を混ぜ内外壁の左官仕上材として用いる。超微細の孔が無数にあるため、調湿・保温・断熱・吸音性能にすぐれている。 結露やカビ対策にも効果があるが比較的高価な製品が多い。

4. サイディング

❶ 金属系

施工が早く商品のバリエーションが多いが、金属のためそのままでは断熱性が落ちるため金属板に断熱材を 裏打ちしたものが多い。近年は軽量、耐久性に優れるアルミ製やガルバニウム鋼板が主流だが価格が高く、ス チール製のものは安価だが耐久性が落ちる。 錆防止の再塗装が10~15年で必要になる。

❷ 窯業系

セメントなどを原料とした繊維質の木片や無機物などを混ぜ、強化してプレス成形などで板状としたもの。最近は塗装品が一般的になっている。施工のしやすさに加えて、品質の均一性や価格や商品バリエーションが豊富なことから現在全国の住宅の約7割が窯業系サイディングで施工されている。厚さは14mmから25mmまであり厚みが出るほど重厚感がでるが、基本的には厚みと価格は比例する。豊富な商品によるデザイン性が人気だが規格品の無機質さが個性さをなくして見せてしまう点もある。表面温度が上がりやすく、蓄熱性が高いため、表面塗装膜の劣化が始まるとチョーキング現象(※)や反り・割れといった症状を起こし、大規模な修繕が必要になる場合もある。再塗装の目安は7年~8年。(※外壁の塗料の劣化現象:手でなでると塗料が付着し真っ白になる)

❸ 木質系

防火性能から都市部では施工が制限される。

❹ 樹脂系

塩ビ樹脂を板状に形成したもの。軽量で耐久性に優れるが遮音性・耐火性が落ちるため下地が必要になる。そのため既存の壁の上から貼るリフォームなどで多く使用される。